小郡市では令和3年からRPAを活用していましたが、ライセンス体系や為替影響によりランニングコストが拡大。「無料ツールで広く触れられる環境を作りたい」という意図から、完全無料RPA「マクロマン」へ切替え、RPA女子の伴走で短期間に4業務を自動化。定例業務の大幅削減と、全庁展開しやすい運用モデルを実現しました。

RPA導入を検討しはじめた背景や当時の課題を教えてください。
肥山 氏
職員の時間外勤務の圧縮とノンコア業務からの解放が課題でした。
特に、総務部門や人事課、教育総務課などで、正規職員がノンコア業務に多く従事している状況が続いていました。
和田 氏
この課題解決の1つの手段として、令和3年に他社の有料RPAツールを導入し、活用していました。
このRPAツールは、利用人数に応じたライセンス費用が発生し、また、海外製ということもあり為替の影響で費用が上昇していました。
そのため各課でRPAを導入し、全庁展開していくうえで費用対効果を考えると、難しい状況でした。
そのようななか、ジチタイワークスのDMでマクロマンが紹介されており、ツールが無料で使える点に惹かれました。そこで、既にRPA化している業務をマクロマンでも稼働出来るかどうかの確認に取り組み、マクロマンでも問題なく稼働できる実感が湧き、導入を決めました。
RPA化する業務の選定はどのようにされましたか。
Excel転記など反復作業の多い業務を中心にRPA化を進めた。
肥山 氏
今回のマクロマン導入をきっかけにということではないですが、令和4年に全庁業務量調査を行っており、調査結果を基に各担当課でRPA化できそうなノンコア業務がないかを検討しました。また、全庁に共通する財務業務等については、当課で主導してピックアップしました。
他自治体での導入業務も参考にしています。なかには、市民から受け取った書類を返送するような業務では、まとめて処理をするのではなく、都度処理をして少しでも早く市民に返送してあげたいという想いから、自動化の対象外にしたいというケースもあり、対象からはずれるものもありました。
当初はRPA化の候補となる業務が十分に集まりませんでした。国から示されているようなRPA化の事例や一般的な事例は世の中にいくつもあるのですが、本市に置き換えてみると、「今じゃない」、「当市には合わない」など、担当課ではRPA化を進めづらい状況もあったためです。
和田 氏
それは何故なのか?を深堀ってみると、『業務の最適化』ではなく、『人が手作業で処理をするための最適化』がされていることがわかりました。例えば月に100件処理しなければいけない(残業の原因のひとつになっている)業務を、日で分割して少しずつ処理をしたり、複数人で分担していたのです。そうすれば、1日や1人あたりの処理件数はそこまで多くないので、その業務への負担感を感じにくく、結果として、改善しようというモチベーションになりづらいことで、課題やRPA化の候補として上がりづらかったのです。
しかし、これらをまとめて1回で処理をし、それを自動化してしまえば良いのでは?という提案をしてRPA化の候補に引き上げているケースが結構ありました。

業務のRPA化を進めるうえで決めたことや工夫した点はありますか?
プロと現場の役割を明確に分け、相談しやすい運用体制を整えた。
肥山 氏
「開発はプロに任せ、職員は運用に集中する」という方針を明確にしました。
RPA女子に要件整理からシナリオ開発までを依頼し、職員は対象業務の洗い出しやテスト確認に専念。
また、制度改正や年度更新に対応できるよう手順書を整備し、軽微な修正は庁内で対応できるようにしました。
導入後もチャットやオンラインで質問・相談できる体制を整えたことで、現場が安心して運用を続けられています。
「外部委託に頼りきらず、内製とのバランスを取る」ことを意識した結果、短期間で定着まで進めることができました。
「RPA女子」からは具体的にどのようなサポートを受けたのでしょうか。
また、それに対する満足度はいかがでしたか?
要件整理から運用サポートまで一貫支援を受け、現場に寄り添った対応に高い満足度を感じている。
肥山 氏
本市では、エンジニア派遣として「RPA女子」に来庁いただいています。 ネットワーク上、庁舎内でしか開発できない案件ばかりなので、主に当課の執務室内で作業をしていただいています。これまでに4つの業務をRPA化し、いずれも業務ヒアリングと開発を「RPA女子」にお任せし、「マクロマン」の挙動をふまえた操作方法についてもレクチャーを受けました。
和田 氏
(開発は「RPA女子」にお任せしておりますが、)なかには、毎年同じスクリプトを使っていく予定で、年度が変わることで修正が発生する箇所があります。その場合の対処法の説明書も作っていただいているので、それを見て対応できるような小規模のものは職員が対応するという風にしています。
肥山 氏
また、前提として本市の職員がRPAを開発しているわけではないので、自分たちで実装したときにエラーで動かなくなった場合、その度に「RPA女子」に対応方法を聞かなければいけなかったり、作ったスクリプトが使えなくなったりということを恐れていました。その点、「RPA女子」はそれらを理解したうえでヒアリングやエラー対応等をしてくれているので、ありがたいです。
和田 氏
また、納品して終わりではなく、余った時間に、色々な案件の不明点や相談に乗ってもらうことができ、助かっています。
マクロマンの導入効果について教えてください。また、そのなかでも特に効果の大きかった業務は何でしょうか。
4業務で最大87%の時間削減を実現し、とくに就学援助の入力自動化で大きな効果を得た。
以下がマクロマンで自動化した業務とそれぞれの年間削減率です。
業務1.定例的な支出命令書等の財務会計処理 : 74%削減

業務2.就学援助申請受付・認定入力 : 86%削減
![STEP1.Excelから必要なデータを取得 STEP2 AcrocityPLUS就学援助にログインし[STEP1]のデータを転記 STEP3 STEP1~2を繰り返し STEP4 転記したデータが登録できた場合はExcelに済を入力 STEP5 転記したデータが登録できなかった場合はエラーの内容をExcelに入力](https://www.macroman.jp/hs-fs/hubfs/RPA/macroman/images/case_macroman/ogori/macroman_case_ogori_detail2.png?width=800&height=292&name=macroman_case_ogori_detail2.png)
業務3.更生医療レセプト入力 : 87%削減

業務4.定例的な調定書の起票 : 75%削減


肥山 氏
この中でも「就学援助申請受付・認定入力」業務は特に効果が大きかったです。この業務は年に1回の大型業務で、数百~1,000件規模のものを、職員総出で手分けして手入力していました。ここの手入力の部分が無くなり、事前に流し込むExcelシートの作成や入力エラーが出て入力できなかったものを入力する作業程度で済むようになったのは、かなり負担感は減ったのではないかと思います。
和田 氏
これを短い期間で対応しなければならなかったので、年に1回の頻度とはいえ負担はかなり大きく、この1回が削減できるというのは大きかったです。
肥山 氏
また、「支出命令書等の財務会計処理」は、携わっている課や職員が多いため、効果を感じている職員が多いですね。
なお、今後についてもマクロマンの導入範囲を広げていく予定で、現時点で5つ、新たな業務自動化対象を増やす予定となっております。
RPA導入経験を経て、他自治体での導入にあたりシェアすると役立つと思われるポイントを教えてください。
小さく始めて成功体験を積み、現場主体でDXを進めることが定着の鍵。
和田 氏
ある業務をRPAで自動化しようとしたときに、RPAはボタン1つですべての処理が完了するというイメージを持ってしまい、「それが叶わないからRPA化をやめよう」という風に考えるのではなく、例えばその業務を3分割して「ここの部分は単純作業なので、自動化しよう。残りの部分は人が考えれば良い」という風に、業務の分解をすると意外と活用の場はあると思います。
また、「マクロマン」は無料で使えるので、お試しでやってみて使えそうなのかを体感してみるのが良いと思います。
肥山 氏
他の自治体の話を聞いていると、自分たちで開発しようとしている話をよく聞きます。
それ自体は素晴らしいことですが、実際はRPAの知識を習得して開発するということだけでもすごくハードルが高いことです。
そのため、結果として尻込みをしてしまったり、浸透していかなかったりということを踏まえれば、プロに任せられるところは任せるという風に割り切ることでハードルを下げていくのが良いと思ってますし、現在RPAを庁内展開できているコツでもあるのかなと思います。
和田 氏
そうですね、もちろん最終的に職員のスキルアップとして内製化できれば良いですが、RPA導入の時点でいきなりRPAの知識習得から…となると、職員としては急にハードルが上がると思うので、少なくとも安定運用に入るまではプロにお任せするのが正解だったと思います。
また、このようなDX推進のポイントとしては、RPAを導入したらDXができるわけではないので、RPA導入をきっかけに業務の見直しや合理化がどれだけできるかが鍵となるのではないかと思います。