大川市では、毎月発生する支出命令書作成業務を中心に、手入力や転記などの定型作業を効率化することを目的にRPA導入を検討。
無料で使えるRPAツール「マクロマン」と、現場に寄り添う伴走支援「RPA女子」により、導入からわずか5日間で自動化を実現しました。支出命令書作成にかかる時間を82%削減し、職員の負担軽減と業務の平準化を両立。コストを抑えながらも、無理なく始められる自治体DXの好事例となりました。

請求情報を財務会計システムに転記


RPAツール「マクロマン」のことを知った経緯についてお聞かせください。
DMM社との連携の中で紹介を受け、庁内の業務課題を解決するツールとしてマクロマンに興味を持った。
西田氏
大川市では、合同会社DMM.com(以下、DMM)と連携し、2022年3月から「デジタル化 → デジタル活用 → DX」の3ステップでDX推進事業を進めています。まず「デジタル化」フェーズでは、公式LINEアカウントの開設や「Grafferスマート申請」の導入を行い、市民とのコミュニケーションや申請手続のデジタル化を実現しました。続く「デジタル活用」フェーズでは、庁内業務の課題解決に役立つITツールを検討していたところ、
DMMさんから無料で利用できるRPAツール「マクロマン」を紹介いただきました。サポート体制が整っている点にも魅力を感じ、導入を検討したのがきっかけです。
RPA導入を検討する際、どのような点を重視されましたか?
コスト負担やネットワーク準備が不要で、少しずつ導入を進められる点に魅力を感じた。
西田氏

大規模な自治体と比べて、私たちのような自治体は業務量そのものは小さいものの、業務の種類はほとんど変わらないという実態があります。そのため、1つひとつの業務量が大きくない分、RPA導入のコストパフォーマンスが見えにくいという課題を抱えていました。
この点、マクロマンは基本無料・ランニングコスト不要のため、少しずつ業務を選びながら導入できる点が魅力でした。
他社ツールにも無料トライアル期間がありますが、期間が1か月程度と短く、さらにインターネット接続が必要なクラウド型だと、庁内ネットワークの設定変更などの準備が必要になります。まだ採用を検討している段階で、そうした準備や工数をかけるのは現実的ではありませんでした。その点、マクロマンはデスクトップ型で、インストールするだけですぐ使える。期間の制限なく無料で使い続けられることもあり、非常に導入しやすかったです。
最初の導入業務として健康課の「支出命令書」作成業務を選定したのはどのような理由からでしょうか。
中間データが作りやすく、複数課で共通して行われる「支出命令書」作成業務が、最初のRPA化に最適だった。
西田氏
紙の帳票をRPA化するには、紙とRPAをつなぐための中間データの作成が必要になるのですが、「支出命令書」作成業務は他に候補に上がった業務と比べると、中間データの作成が容易でしたので、最初に実施する業務として最適でした。
坂本氏
具体的にはリース料だったり、委託料だったり毎月定額で支払いが必要なものを、日付だけ変えて毎月同じ処理をする業務なのですが、これならRPAで簡単にできるのではと思っていました。そして健康課単体では月に3、4件程度の発生でしたが、「支払命令書」作成業務自体は庁内の多くの課で行われる業務でしたので、健康課で成功した後は横展開できる点も選定ポイントになったのだと思います。
どのような体制で導入を進められましたか?
DX担当と現場担当が連携し、RPA女子と現地・オンラインの両面でスムーズに導入を進めた。
西田氏
事前の段階では、DX担当である私と現場担当の坂本が、RPA女子の方と現場PCを確認しながら打ち合わせを行いました。
その後もオンラインで数回すり合わせを重ね、最終的に手順書が完成しました。
短期間で構築が完了したと伺いましたが、RPA女子の対応はいかがでしたか?
短期間でスムーズに構築が進み、プロの対応力とスピード感に安心感と満足感を得た。
西田氏
構築フェーズは、RPA女子の方にほとんどお任せして進めていただきました。作業の進行も非常にスムーズで、予定通り5日間でドキュメントの納品まで完了し、大変感謝しています。
実は当初、自分でもダウンロードして試してみようかと思っていたのですが、1から構築するのは難しいと感じ、開発を依頼しました。
依頼後は、さすがプロだと感じるほどテンポよく作業を進めてくださり、導入までのスピード感を考えると、お願いして本当によかったと思っています。
健康課での「支出命令書」作成業務は、RPA導入によってどのような効果がありましたか?
時間削減だけでなく、業務を見直すきっかけにもなった。
坂本氏 
健康課単体では件数が少ないため、大きな時間削減効果は目に見えにくいものの、年間の想定で見ると、約200分の作業が36分に短縮(約82%削減)される見込みです。
定型的な入力作業から解放されることで、心理的な負担が軽減された点も大きな効果だと感じています。また、RPA構築の過程で事務フローを整理する中で、不要な作業の発見やより効率的な手順の検討につながり、単なる自動化にとどまらず、業務全体を見直すきっかけにもなりました。
今後のRPA活用の展望について教えてください。
また、導入を検討している他自治体に向けて、参考になりそうなポイントがあればお願いします。
RPA化だけでなく業務全体を見直す視点が重要で、マクロマンは小規模自治体でも始めやすい。
西田氏
具体的な展開はこれから検討していく予定ですが、単に人の手で行っていた作業をRPAに置き換えるだけでなく、
業務プロセスそのものを見直す(BPR的な)視点が重要だと感じています。マクロマンはツール費がかからない無料RPAであり、さらにRPA女子のサポートによって開発・導入をスムーズに進められる点が大きな魅力です。そのため、我々と同じように人員やリソースが限られた自治体にとっても、スモールスタートしやすく、現実的に取り組めるDX推進の第一歩になると感じています。