医療現場ではDXが進む一方で、日々の小さな定型業務には人の手が残り、担当者の心理的負担や属人化が課題となっていました。公益財団法人 操風会では、無料で使えるRPAツール「マクロマン」を導入し、病棟管理日誌の印刷やデータ抽出といった毎日発生する作業を自動化。
わずか5〜10分の業務ながら、365日続く“誰かがやらなければならない作業”をなくし、属人化防止と業務の安定運用を実現しました。

RPA導入を検討しはじめた背景や当時の課題についてお聞かせください。
現場に残る“毎日の小さな手作業”を自動化でなくしたかった。
医療機関においてもDX化が求められる中、全体としては進みつつも、細かな日常業務では依然として人手に頼る煩雑な作業が多く残っていることが課題でした。解決策としてRPA導入を検討し、入退院事務やリハビリ部門からの依頼業務を中心に、システム担当として私がマクロマンを用いたスクリプトを作成し、自動化を進めました。
これらの課題に対し、マクロマンでどのような業務を自動化されましたか?
また、効果についてお聞かせください。
毎日発生していた5〜10分の作業をゼロにし、属人化を解消。
岡山旭東病院…「①病棟管理日誌の印刷」 岡山リハビリテーション病院…「②部門システムからのデータ抽出」
を自動化しています。
①病棟管理日誌の印刷
※毎朝8時と夕方16時にタスクスケジューラー機能で計画実行

「①病棟管理日誌の印刷」では毎日5分×2回(1日あたり10分)の作業時間がゼロになりました。
5分程度の業務が削減のため、勤務時間に大きな変化はないですが、心理的な負担は多少なりとも軽減されたと考えられます。
②部門システムからのデータ抽出

「②部門システムからのデータ抽出」では従来、この作業を毎朝誰かが手動で実行する必要がありました。病院は365日稼働しているため、その日に本作業をする担当者を決める難しさに加え(作業自体は5分程度と短いものの)、手間がかかることが課題となっていました。しかし、RPA「マクロマン」の自動化により、特定の担当者に依存することなく運用できるようになりました。
業務効率化の手段として、マクロマンを選ばれた理由を教えてください。
無料・高機能・オフライン対応の3点が決め手。
無償でありながら、有償版に劣らない機能を備えていた点が大きな魅力でした。
また、医療機関ではセキュリティの関係でネットワーク制限が多いのですが、オフラインでも利用できるという点が導入の決め手になりました。
導入にあたって、どのような準備をされましたか?
現場ヒアリングで“自動化できる業務”を見つけ出した。
まず、RPAに興味を持つ職員に声をかけ、毎日同じ作業を繰り返している業務を洗い出しました。
その中からRPAで実現可能なものを選定し、私がスクリプト開発を行いました。
他の医療機関への導入で役立つと思われるポイントを教えてください。
専用環境の用意と柔軟な運用が安定稼働のカギ。
医療現場では、共用PCを使うケースも多く、自動実行中に職員が誤って操作してしまうリスクがあります。
そのため、マクロマン専用PCを1台用意しておくと安全に運用できます。
また、日誌印刷ではシステムの反応時間に応じて待機時間を多めに設定しており、状況によっては手動で実行した方が早い場合もあります。
そのため、自動化と手動実行を状況に応じて使い分けるのがポイントです。
マクロマンの導入を検討している皆さまへメッセージをお願いします。
“小さな自動化”が医療DXを支える第一歩。
スクリプトの作成は、ある程度PC操作に慣れた職員が担当するのが望ましいです。
医療機関でいえば、システム担当者などが中心になるとスムーズに進みます。
医療現場は日々多忙ですが、こうした小さな自動化の積み重ねが、業務改善と働きやすさの両立につながると感じています。