RPAとAIの違いとは?AIとの組み合わせのメリットや事例を紹介
目次
人間が指定した作業を自動化するRPAに対し、AIは自ら学習を重ねて主体的に思考する仕組みです。単純作業を得意とするRPAと頭脳労働を得意とするAIを併用することで、業務の自動化範囲を拡大し、業務効率や生産性を向上させることができます。
本記事では、RPAとAIの違いやAIとの組み合わせのメリット、RPA×AIの活用事例をご紹介します。RPAとAIの違いについて知りたい方や、これからRPAの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
RPAとAIそれぞれの特徴
RPAとは、あらかじめ人間が作成したシナリオに基づいて、定型的な動作を行うソフトウェアです。RPA自身が柔軟な判断を行うことはなく、一定のルールに従って動作します。
一方のAIは、自らが思考力を持ったシステムで、AI自身が分析によって最適な答えを導き出します。多くのデータを学習することで成長していき、より複雑性の高い判断が可能になる点が特徴的です。
RPAとAIの最も大きな違いは、「主体的に思考するかどうか」です。RPAは、人間の指示を受けて動作するため、主に人間のサポートを目的として使用されます。一方のAIは、主体的に思考ができるため、人間の代わりにデータを分析して最適な結論を出すなどの使い方が可能です。
最近では、AIを組み込んだ高度なチャット形式のテキスト出力AI「ChatGPT」なども登場しており、人々の実生活やビジネスにもAIの活用が広がってきています。
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RPAやAIにはできないこともある
RPAやAIは、人間の作業をサポートしてくれる有効な手段ですが、RPAやAIを駆使しても、人間にしか対応できない業務はいくつかあります。
たとえば、以下のような臨機応変な思考が必要な業務は、高度な思考を可能にするAIを活用しても、期待通りの成果を出すことは難しいのが現状です。
- 新商品の企画や経営戦略の立案
- 人間の感情に合わせた応対
- 0→1を生み出す作業(クリエイティブな作業)
- 定期的なルール変更がある業務
RPAには3つのクラスがあり、後述するクラス3の「CA」まで技術が発展すれば、意思決定まで作業を自動化できる可能性は残されています。しかし、現状では意思決定を自動化できるだけの技術は実用化されていないため、人間が対応する必要があります。
【比較】RPAとAIの違い
RPA | AI | |
---|---|---|
仕組み | 自動化システムそのもの | システム内に搭載されているもの |
働き方 | 指示された通りに動く | AIが判断して動く |
向いている作業 | 人間の判断が不要な単純作業 | 頭脳労働 |
向いていない作業 | ・人間の判断が必要な業務 ・頭脳労働 |
人間らしい高度な判断が必要な業務 |
RPAの仕組みは、いわば自動化システムそのものです。人間が設定したルール通りに動き、単純作業を得意としています。一方のAIは、システム内に搭載された「主体的に思考する知能」であり、複数のデータから共通点を抽出するような頭脳労働に向いています。
AIは機械学習と呼ばれる学習方法によって大量のデータを分析し、トライ&エラーを繰り返しながら成長していきますが、RPAは最初に設定されたルール以外のことはできず、自分で思考して成長することはありません。
上記の表のように、RPAは指示された通りに動作することから、AIのような判断が必要な頭脳労働は不得意です。RPAは「ルールに則って動作するシステム」、AIは「自分で思考し判断するシステム」と考えるとわかりやすいでしょう。
RPAとAIを組み合わせるメリット
RPAとAIを組み合わせるメリットとして、RPAだけでは難しい複雑な処理を実現できる点や、処理の内容によっては精度が上がる点などが挙げられます。ここでは、RPAとAIを組み合わせる2つのメリットについて解説します。
RPAだけでは難しい複雑な処理を実現できる
RPAは、あらかじめ設定されたルールに基づいて、手順の決まった定型業務を処理するためのシステムです。そのため、基本的には事前に指示された決まった手順の処理しか実行することができません。
しかし、自分で思考できるAIを組み合わせることで、柔軟な判断が求められる処理もカバーできます。特に自然言語解析や画像解析、音声解析などの複雑性の高い処理は、AIを組み合わせることで可能になります。
処理の内容によっては精度が上がる
特定の技術においては、AIを組み合わせることによって処理の精度が向上します。たとえば、AI-OCRと呼ばれる、OCRにAIを組み込んだ技術を活用することで、人によって癖がある手書き文字の読み取りも可能になります。
OCRを利用したとしても、RPAだけではスタンダードな漢字やひらがな・カタカナなど以外を読み取ることは難しいですが、AIを組み合わせることで癖の強い手書き文字でもどの文字に相当するか判断できるようになるため、RPA単体で活用するよりも処理効率が向上します。
RPA×AIには3つのクラス(段階)がある
RPA×AIには、RPA、EPA、CAの3つのクラスがあります。それぞれの特徴を下記の表にまとめました。
クラス1:RPA | クラス2:EPA | クラス3:CA | |
---|---|---|---|
概要 | RPA | RPA×AI | RPA×より高度なAI |
特徴 | 定型業務のみ行える | ある程度の非定型業務を行える | ほとんどの業務プロセスを自動化できる |
自動化可能な業務量 | EPA、CAと比較すると少ない | CAと比較すると少ない | 3つのなかで一番多い |
業務例 | 情報取得、入力作業、検証作業、定型業務など | 自然言語解析、画像解析、音声解析、マシン・ラーニング、非構造化データの読み取りなど | EPAの結果を利用した戦略立案、事業改善、意思決定など |
イメージとしてはこのようになります。
現状ではクラス2の「EPA」に相当する製品が市場に登場しています。この数年でAIは飛躍的に進歩しており、今後はさらに私たちの生活に根付いていくことでしょう。
クラス3の「CA」に相当する製品が一般レベルで浸透したとき、人間の暮らしはこれまでとは全く異なるものになっているかもしれないと思わされるほどです。
ここからは、3つのクラスの特徴について詳しく解説します。
クラス1:RPA
クラス1はこれまで説明してきた従来型のRPAのことです。データ取得や入力作業、コピー&ペースト、データ同士の整合性のチェック作業など、ルールが決められた定型作業や繰り返し作業を実行するのに適しています。
クラス2:EPA
EPAとは「Enhanced Process Automation」の略称で、RPAとAIを連携した自動化の仕組みを指します。RPA単体ではルールに基づいた定型業務のみしか処理できませんが、RPAとAIを連携させることで一部の非定型業務も自動化できます。
たとえば、自然言語解析によって大量のテキストデータを分析し、人間の質問に最適な回答を返したり、音声データを分析して自動的にテキスト変換したりと、RPA単体よりも多くの業務の自動化が可能です。
クラス3:CA
CAは「Cognitive Automation」の略称で、より高度なAIを活用し、柔軟な意思決定が必要な業務も含めたほとんどの業務プロセスを自動化できるRPAです。まだクラス3にあたるCAは企業レベルでの導入が難しいものの、近年のAIの飛躍的な技術発展もあり、遠くない将来に実現が期待されています。
CAにおいては、ディープラーニングなどによって高度な思考能力を備えたAIがRPAに組み込まれて、プロセス分析や事業改善、戦略の立案など、意思決定まで自ら行うことができます。
これらの人間が処理していた定型業務を自動化することで、業務効率や生産性の向上のほか、人件費の削減などにも役立ちます。RPAやAIだけでは処理できない柔軟な思考が必要な業務などに人的リソースを回せるようになる点も、導入メリットの1つです。
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RPA×AIの活用例
RPAツールは、まだクラス1の製品が主流ですが、近年少しずつクラス2の製品も登場してきています。今後、遠くない未来にクラス3が登場する可能性も考えられます。
ここでは、自動登録処理や案件優先度の設定、在庫数分析など、3つのRPA×AIの活用例をご紹介します。
AI-OCRを利用したデータの自動登録処理
AI-OCRを利用したデータの自動登録処理は、クラス2「EPA」に相当します。AI-OCRを活用して、紙面に印刷されている文字をテキストデータに変換し、そのデータをRPAでシステムやデータベースに自動登録する処理です。
AI-OCRを活用することで、一人ひとり筆跡が異なる手書き文字の読み取りにも対応できるため、保険の申込書類や銀行の手続き書類など、ビジネス上のさまざまな場面で活用可能です。
メールや案件優先度の自動設定
メールや案件優先度の自動設定も、クラス2の「EPA」に相当する活用例の1つです。EPAにメールボックスに受信したメールやSFAに登録された新規案件の内容を分析させ、優先度の高い案件を自動的に振り分けることができます。
EPAが優先度を自動的に判断することで、人間による確認を挟むことなく、優先度の高い案件から処理できるようになるため、業務効率の向上が期待できます。活用が進むほどEPAの分析精度も高まるので、より業務の実態に即した振り分けが可能になります。
発注すべき在庫数の分析
発注すべき在庫数を分析し、発注計画を作成する活用例は、クラス3の「CA」に相当します。過去の在庫の引き当てデータをCAに分析させることで、在庫の減少ペースを導き出し、在庫数の変動をはじめとしたさまざまな要因を組み合わせて、適正な発注数を分析できます。
これまで人間による判断が不可欠だった業務をCAが自動化してくれるため、業務の大幅な効率化が期待できます。また、スキルの差による成果にばらつきを防ぎ、常に一定の成果を出せる点も強みです。
まとめ
RPAとAIは、「主体的に思考するかどうか」という点で異なっており、AIの方がより人間に近い動作が可能です。RPAを活用する際は、RPAとAIを組み合わせることで、より複雑性の高い業務を処理することができるようになります。
RPA×AIには3つのクラスがあり、現在はクラス2「EPA」までの製品が登場していますが、近い将来には意思決定まで自動化できるクラス3「CA」の登場も期待されています。RPAを上手く活用して、社内業務の自動化を推進していきましょう。
この記事の監修者

コクー株式会社
RPA事業部 エヴァンジェリスト
吉田 将太
RPA事業部の立ち上げとして、営業・RPA開発・研修講師を経て、2023年1月にエヴァンジェリスト着任。
RPAやRPA以外の技術を使って業務効率化を目的にした様々な開発に携わる。この経験から300名以上の研修講師を務める。